『神様のメモ帳 3』について
「神メモ」シリーズの第3巻。
あとがき合わせて339ページ。
ネタバレがありますので、まだ読んでいない方は気を付けて下さいね
大切なものをたくさん失いつつも帰ってきてくれた彩夏に対し、複雑な気持ちを抱きながらも喜びを噛み締めるナルミ。
そんな喜びもつかの間、生徒会長・薫子から園芸部の解体宣言を言い渡されて……ってのが、3巻の話なんですけどね。
この作品が私の中で最も好きなライトノベルの位置に立っていることはずっと前から自覚していたのですが、
3巻を読んでその気持ちが尚更膨れ上がりました。
もうね、全てが大好きなんですよ。
たとえ依頼人を失ってしまうとしても仲間の意志を尊重し、その人に関する事について非協力を貫く少佐やヒロも。
ちっぽけではあるけど自分にとって確かな居場所である温室とそこではみ出し者達に教育を施していた先生を、自分の身を犠牲にしてまで守り通そうとするテツも。
語気は強いけれど、相手の気持ちをよく考えてそれに相応しい言葉で励ましてくれるミンさんも。
記憶を失って敬語になってしまった彩夏と接する度に昔の彩夏を思い出してしまい、とても辛く感じつつもそれを言ってしえば今の彩夏を否定してしまう気がするため、なかなか口に出して言えないナルミも。
ナルミのそういう態度を分かっていながら、いくら思い出そうとしても思い出せない。
その上思い出そうとすると、真っ暗闇に引きずり込まれそうな気がして……でも、自分が昔の記憶を思い出せない事でナルミに辛い気持ちにさせてる事も知ってて、それが辛くて辛くて堪らない彩夏も。
そして、不躾な態度を取りつつも、心の中ではいつもナルミの事を心配しているアリスも。
みんなみんな、みんな好き。
仲間の存在って、周りの人とのかかわりって良いなぁと読んでて実感しましたよ。
主にナルミと彩夏のやり取りでだけど、胸がキューっとなって涙ぐむことが何度もありましたからね?
この上なく素晴らしい小説だと思う、少なくとも私の中では。
事件の真相に近付くにつれて漠然と感じましたが、「嘘」には2つのタイプがあるよね。
自分の保身のためだけに吐き、結果的に他人を傷付けることにしかならない「薄汚れた邪悪な嘘」。
誰かを守るため、その人が傷付ついて欲しくないがために吐いて、場合によっては自分の身すら犠牲にする「優しい潔白な嘘」。
嘘は基本的に吐くべきじゃないけど、後者なら吐かれても許せると思う。
その嘘に気付いた瞬間は竜の逆鱗に触れられたのごとく怒り悲しむけど、吐いた人の気持ちを汲めることが出来ればきっと。
私ごときの貧相な語彙力では上手くまとめられそうにないので詳しくは述べませんが、
あれだけ園芸部の存続に躍起になっていたナルミが新しく作られた“中央園芸会議”には参加しなかったことが驚きでした。
いや、1クラス1名でナルミと彩夏は同じクラスだから参加しないのも当然っちゃ当然なんだけどね。
結局、ナルミは自分と彩夏の居場所を守りたいんじゃなくて、彩夏に笑顔で居て欲しかったんだなぁと思う。
自分の心配をする前に他人の心配をする、優しい子ですね…
“自分を大切にしない奴は他人も大切にすることが出来ない”とはよく言ったものですが、自分という存在をかなぐり捨ててまで誰かのために尽くそうとする人はとても美しいと思う。
自分を真っ先に考えて他人を二の次にした人が、はたして周りの人を真に大切にすることが出来るだろうか…
「もうそれは奇績じゃない。もう起きてしまったのだから。それは、ただの現実だ。」
彩夏が目覚めたことに対するアリスの言葉。月並みだけど、とても好き。
次の巻ではどんな物語が待っているか、非常にワクワクしています。
2011/03/05 Sat. 05:23 edit
Category: .書籍物の感想 ライトノベル
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