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惑星観測所の記録

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『九つの、物語』について 




「半月」で有名な橋本紡さんによる小説。
解説も合わせて372ページ。




この小説を横向きで机の上に置き、目線を小説と平行になるようにして厚さを確認。
ふむ、少し厚めの小説か。
ページ数を確認するため、試しに後ろの方を開くと、何故だかトマトスパゲッティのレシピが載っていた。
何なんだ、このレシピは……それが、この小説を読むにあたって私が真っ先に感じたこと。
350ページ越えとページ数だけを見ればサラリと読める作品ではないかのように思えたけども、実際に読んでみると意外とすんなりと読んでいけたよ。
40ページ前後の話が九つ合わさったようなもので、1つ1つの話が独立しているかのように感じられたからなのかもしれないね。
そしてそれ以上に、知らず知らずのうちに自分自身がこの作品の中に引き込まれていた。
本音を言ってしまえば一気に最後まで無我夢中で読みたかったけど、そこはグッとこらえて少しずつ読んでいく。
作中で展開されていく一場面一場面をしっかりとこの目に焼き付けるかのように。
声ならぬ声を聞き漏らさないように。


主人公・ゆきなと、長い間いなかったのに突然帰ってきたゆきなの兄・禎文。
ゆきなの恋人・香月君やゆきなの友人・紺野君、公園ね地縛霊である鴫子さんといった人々によるあどけない日常が描かれていく本作品。
読んでて死にたくなるような恋愛模様があるわけでもなく、読者を異なる世界へ誘ってくれるかのような冒険活劇があるわけでもない。
ただただ、ゆきなとその周りの人々による日常が描かれたもの。
1つだけスパイスを利かせた部分があるとすれば、それは禎文が既に死んでいる、つまり幽霊であるというところなのかな。
そういう設定があるだけに読んでて悲しくなってくるのかなと思っていたのだけれど、読んでいくうちにその考えが誤りであることに気付かされた。
普通に料理を作っていたり、ゆきなと時折笑いながら会話を弾ませていたり、同じ幽霊である鴫子さんと楽しく話し合ってる禎文からは悲しい雰囲気なんか微塵もなくて。
だったら悲しくないんじゃないかとも感じられてくるけど、それも違う。
解説ページにも書かれていたけど、禎文は「こういったどうしようもなく悲しい時にこそ、笑った方がいい」ってことに気付いていたからなんだと思う。
悲しい気持ちは人を立ち止まらせる。後ろ向きな感情に心が支配され、前を見ることが出来なくなる。
人が再び立ち上がって前を見て歩けるようになるためにも、悲しい時にこそ笑うことが必要なんだと思う。


この禎文という人物は非常に素敵な方で、各話ごとに彼の口から発せられる格言も読んでて心地いい気分にさせられたよ。
ホントにどの格言もよくって、私にはどれがいいかなんて選べないんだよね。
「気持ちの方がはるかに大切だよ。血の繋がりなんて当たり前だろう。そういうのとは関係なしにつながってるのって、だからこそすごいとし、大切なんじゃないか。ただそれだけで尊いんだよ」
強いて挙げるとすれば、多分この一言だと思う。
これは禎文が生きていた頃の恋人が息ピッタリなゆきなと禎文を羨ましがるような事を言ってきたことに対し、禎文がそれを否定するために発した言葉なのだけど
この言葉を聞くと血のつながりってものがいかにちっぽけな存在か気付かされるんだよね。
血のつながりというのは生を得た瞬間に決して切れない鎖によってがんじがらめにされてしまうようなもので、抗うことすら叶わずただ受け入れるしかないもの。
それに引き換え、気持ちのつながりってのは自分が他者と関わりを持つ事で初めて得られるものなんだ。
誰かに話し掛けられたことで始まるものだってあるし、そこまで密接な関係にはなれないかもしれないけど、ネット上でやり取りを重ねる中で培われるものだってある。
大事な事は自分がその人に対して関わりを持とうとする事なんだと思う。
前に一歩踏み出すだけで、気持ちのつながりは無限に創り出す事が出来るんだ。




途中から何を書いてるのか自分でもよく分からなくなっちゃったけど、是非とも1回読んでみて欲しいと思う。
小説好きな人も、それから小説を普段読まないって人もね。
小説という媒体を通して、人生の奥深さや周りの人々がいかに大切かを実感できると思うよ。

そして、出来れば各話の根っこの部分に見え隠れする著名な文学作品も読んでもらえたらいいな。
私は作者名は全員知ってたけど、その作品自体は何一つ読んでなかったよ。
小説好きを自称してるってのに、呆れちゃうね…
これを機会に、本屋さんで探して購読する事にするよ。
もちろん、焦らずじっくりとね。



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2011/08/11 Thu. 20:49  edit

Category: .書籍物の感想 小説

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