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惑星観測所の記録

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『海のある奈良に死す』について 

海のあるならに死す

著名なミステリー作家、有栖川有栖さんによるミステリー小説。
あとがき・解説合わせて402ページ。


※ネタバレがございますので、まだ読んでないという方は気を付けてくださいね






作品の感想に入る前に、1つだけ断っておきます。
私が感想記事にした他の小説を見てみれば一目瞭然だと思われますが、私は所謂「ミステリー小説」というものを好んで読むタチではありません。
この小説もちょっとしたワケがあって読んでいましたが、それがなければまず買って読むことはなかったと思います。
近場の書店になかったので、わざわざネット通販で注文して購入したぐらい。
それぐらいの理由がなければ私がまず買わないであろうジャンルが、この「ミステリー物」なのです。
どうしてミステリー物を好んで読まないのかと言うと、それは至って単純で「事件やその解決に終始して登場人物の人間関係・人間ドラマが希薄なものに感じられてしまうから」。
多分、ミステリー物を読んでる方は作中の主人公やその右腕と成り得る人物が起きた事件の謎をあれこれ悩み、解決していく様が読んでいてワクワクさせてくれるのが気に入ってるからなんだと思います。
確かに私もそういう部類は嫌いではないですが、読むんだったら恋愛小説や青春小説でくすぐったいやり取りを肌で感じていたい派なんですよね。
だから、400ページ近くあるこの小説を手にして初めに感じた事と言えば、「はたして最後まで読めるだろうか…」でした。


というわけで、本作品の感想です。
結果だけを初めにお伝えするのであれば、読んでいて非常に面白かったです。
有栖川有栖さんは名前を知ってるぐらいで、この人の書いた小説など一度たりとも読んだ事がなかったので、いい意味で驚かされました。
この人って、こんな作風なんだ!とちょっぴり喜びも孕んだ驚き。
内容としては、作者と同姓同名を持つ作家「有栖川有栖」の友人であり同業者でもある人物「赤星楽」が近々出す新作の取材と称して「行ってくる、『海のある奈良』へ」と言い残して去った後に他殺体として発見されて、主人公が最も親しい友人である犯罪心理学者「火村」と共に事件の真相を暴いていく……というもの。
作中にて、被害者である赤星がその新作に残す作者の言葉として「小説を読むことによって人は時間や空間を超え、未知の世界に遊び、別の人生に触れることができる。凡庸な例えだが、それは旅に似ているのかもしれない」って一言があったんですよね。
この言葉を聞いた途端、なんてステキな響きなんだろうとちょっぴり感銘に打たれたりもしました。
おっしゃる通り、「小説」という媒体を通して人は未知の世界、とりわけ自分の人生では到底味わえないであろう「人生」を疑似体験する事が出来ます。
この一言はきっと、この作品にも当てはまる言葉なんだろうなぁ……なんてぼんやりと感じながら、中盤以降はノンストップなんじゃないかって勢いで読んでしまいましたね~。

主人公の一人称視点で物語が進んでいたからなのかもしれませんが、物語に出てくる登場人物がみんな「生きている」って感覚に襲われたんですよ。
登場人物とのやり取りの中で、地の文にて主人公が悪態をついていたり、親しい友人の火村との掛け合いでちょこっと笑わされちゃった部分もあったり。
事件解決までいってるからモチロン分類的にはミステリー物なんですけど、ミステリー物だと意識せず読み進める事が出来たんじゃないかなって気がします。
多分、それが最後までダレずに読了する事が出来た大きな要因なんだと思いますが~。
ただのミステリー作品に留まらず、福井県の小浜や和歌山県にあるらしい学文路(これで「カムロ」と読むらしいです)についての細かな説明、はてにはあるトリックに使われたサブリミナル効果に関する解説など、読んでて「へ~、そうなんだ!」と思わずうなずいちゃうような内容もけっこー詰まっていたような気がします。
これらの部分を読んだだけでも、作者さんがかなりの工夫と時間をかけてこの作品を練り上げた事がよく分かりますね。
こういう要素があったところも、読んでて面白いと感じられた要因の1つなのかもしれません。
ミステリー小説って、なかなか侮れませんね…


ミステリー物を好んで読んでる人ならきっと、この作品の魅力的な部分にもっと気づけるんだと思います。
残念ながら、ミステリー物が専門でない私にはこの程度しか心に留まりませんでしたが…
初の有栖川有栖さん作品にしては、かなりの好感触だったような気がしますね!
他の作品の作風も、こんな感じなのかな?もしそうだとすれば、こっそりこっそり読んでみたい気持ちもあるのだけど。
長編の物語ではありますが、ミステリー物が好きじゃない私でもガガガーっと読めた作品。
きっとミステリー嫌いな人が読んでも大丈夫……なはず!(ぇ
六章構成&プロローグ・エピローグと読みやすい型になってますので、もしよろしければ一度手に取って読んでみてはいかがでしょうか。
そんなわけで、『海のある奈良に死す』の感想をここで終了させていただきますm(_ _)mペコリ
アニメの視聴もそっちのけで一日中ずっと読んでた、なんて言えませんw
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2012/09/02 Sun. 23:14  edit

Category: .書籍物の感想 小説

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